外は雨模様。

雨と言えば真っ先にさぼっているのが、このソファにだらっとして座っている風雨に弱いだけではなく、ありとあらゆる事に弱い武蔵野だ。

「なぁーなぁー宇都宮〜」

「ん?」

「この表、見た?」

A4の紙が数枚束ねられ、左上にホッチキスで止められている紙をペラペラとめくりながら聞く。

「いや、まだ見てない。」

武蔵野の前にある机を隔てた所にあるソファに座り、コーヒーを飲んでくつろいでいる宇都宮はいつもなら相手にしないようなことに何気なく返事をしてしまった。

「宇都宮は始発が遅く終電が早いって言われてるぜ?」

「・・・そんなの武蔵野も似たようなもんだろ」

「混み具合が異常」

「・・・お前のとこが混まなさすぎる。」

「駅舎が古い」

「それは俺らみたいな線では良く有る事だ」

身を乗り出して得意げに言う武蔵野が何かおもちゃでも見つけた犬のようだと宇都宮は思った。

「じゃあじゃあ、高崎線と宇都宮線が上野〜大宮間で紛らわしい。」

「そ、それは高崎に言え!」

「上野〜大宮駅間が、高崎線と共用の為、どちらかの経路に遅延が発生すると、両経路が遅延してしまう」

「それも高崎に言え!」

「え〜宇都宮も意外と俺と変わんないじゃん」

一緒にしないでくれ。と目で訴えるも、まったく我関せず武蔵野は な〜んだと言わんばかりに納得し、見ていた冊子をポイッと目の前の机の上に乗せた。

「そう言う武蔵野はどうなんだよ?」

「え?俺んとこは〜東京、千葉両方面へのアクセスが便利だとか〜他鉄道会社との乗り入れが利便だとか〜」

「いや、間違いなくダイヤの容易な乱れや他線への乗り換えのタイミングが悪い、風雨に弱くすぐ止まるなどと書かれてあるはずだ!」

自身満々に言い、目の前に置かれている冊子を手に取った。
やはり、武蔵野のページには先程言ったことが見事に書かれていた。

「武蔵野・・・駅構内のトイレが汚いって・・・」

「その変わり、自然が多くて眺めはいいんだぜ?」

「いや、そう言う問題ではなく・・・」

「たまに富士山なんかも見れんだぜ?すっげぇ〜んだぜ?」


宇都宮はこの言い合いがあまりにも低レベルに感じてしょうがなかった。




これ、本当は「Rainrain」のおまけとして書いたものでした。
ページ数の加減でお蔵入りしたものです。ただ、むさっしーが書きたかっただけ…